【連立方程式の必須知識】係数行列と拡大係数行列を解説
目次
係数行列とは?
係数行列とは、連立一次方程式における変数の係数だけを取り出して作った行列のことです。例えば、次のような連立方程式を考えます:
$$ \begin{cases} 2x + 3y – z = 5 \\ 4x – y + 2z = 6 \\ -3x + 2y + z = -4 \end{cases} $$
このときの係数行列は、変数 \( x, y, z \) に対応する係数を取り出して次のように表されます:
$$ A = \begin{bmatrix} 2 & 3 & -1 \\ 4 & -1 & 2 \\ -3 & 2 & 1 \end{bmatrix} $$
拡大係数行列とは?
拡大係数行列(拡大行列)とは、係数行列の右端に定数項の列ベクトルを追加した行列のことです。上の連立方程式の右辺 \( [5, 6, -4] \) を加えると、以下のようになります:
$$ \left[ \begin{array}{ccc|c} 2 & 3 & -1 & 5 \\ 4 & -1 & 2 & 6 \\ -3 & 2 & 1 & -4 \end{array} \right] $$
このような形にすることで、行列の操作(行基本変形)を使って解を求めることが容易になります。
なぜ係数行列や拡大係数行列を使うのか?
連立方程式を行列の形で表すメリットは次のとおりです:
- 視覚的に整理しやすい
- 計算手順(行基本変形)が明確
- プログラムに組み込みやすい(数値計算)
- 行列理論の応用が可能(例えばランクや逆行列)
特に拡大係数行列は、掃き出し法(ガウスの消去法)で連立方程式を解く際に中心的な役割を果たします。
例題で理解を深めよう
例題1:係数行列と拡大係数行列の作成
次の連立方程式の係数行列と拡大係数行列を求めなさい:
$$ \begin{cases} x + 2y + 3z = 4 \\ 2x – y + z = 1 \\ -3x + 4y – 2z = -2 \end{cases} $$
係数行列:
$$ \begin{bmatrix} 1 & 2 & 3 \\ 2 & -1 & 1 \\ -3 & 4 & -2 \end{bmatrix} $$
拡大係数行列:
$$ \left[ \begin{array}{ccc|c} 1 & 2 & 3 & 4 \\ 2 & -1 & 1 & 1 \\ -3 & 4 & -2 & -2 \end{array} \right] $$
例題2:行基本変形による解法
上の拡大係数行列に対して、行基本変形(行の交換・定数倍・加減)を使って解を導くことができます。例えば:
- 第1行の先頭係数を1にする
- 第1列を基準に第2行・第3行をゼロにする
- 以下同様に変形を続けていく
これにより、連立方程式の解(変数の値)を効率的に求めることができます。
行基本変形と行列の操作
行基本変形には次の3種類があります:
- ある行を定数倍する(ただし定数は0でない)
- ある行に他の行の定数倍を加える
- 2つの行を交換する
これらの操作を通じて、行列を「行基本形(簡約化された形)」に変換することができます。これにより、解の有無や解の一意性も判断できます。
また、行列のランク(階数)を調べる際にも、この拡大係数行列が重要です。
まとめ
- 係数行列は、連立方程式の変数の係数を並べた行列。
- 拡大係数行列は、係数行列の右に定数項を加えたもの。
- これらの行列を使うことで、行基本変形による解法が可能になる。
- 線形代数の応用や、プログラミングへの展開にも重要な役割を果たす。
連立方程式の理解を深めるためには、係数行列と拡大係数行列の概念をしっかり押さえ、具体例を通して手を動かしてみることが大切です。