【わかりやすく解説】群とアーベル群の定義・特徴・具体例まとめ

【わかりやすく解説】群とアーベル群の定義・特徴・具体例まとめ

目次

群の定義

群とは、集合 \( G \) とその上の演算(通常は「積」や「加法」)が以下の4つの性質を満たすときの構造のことを指します。
群の定義は以下の通りです。

集合 \( G \) とその上の二項演算 \( \cdot \) が次の性質を満たすとき、\( (G, \cdot) \) をと呼びます。

  1. 閉包性: 任意の \( a, b \in G \) に対して、\( a \cdot b \in G \)
  2. 結合法則: 任意の \( a, b, c \in G \) に対して、\( (a \cdot b) \cdot c = a \cdot (b \cdot c) \)
  3. 単位元の存在: \( e \in G \) が存在して、任意の \( a \in G \) に対して \( e \cdot a = a \cdot e = a \)
  4. 逆元の存在: 任意の \( a \in G \) に対して、ある \( b \in G \) が存在し、\( a \cdot b = b \cdot a = e \)

群の性質

群は非常に多くの分野で応用される構造であり、以下のような性質を持ちます。

  • 逆元は一意に定まる。
  • 単位元も一意に定まる。
  • 演算の「取り消し」が可能なため、方程式を解く際に有利。
  • 有限群の場合、元の個数(位数)に関する理論(ラグランジュの定理など)が成り立つ。

群の具体例

群の例として以下のようなものがあります。

  • 整数全体の集合 \( \mathbb{Z} \):
    加法を演算としたとき、\( (\mathbb{Z}, +) \) は群になる。 単位元は \( 0 \)、逆元は \( -a \)(任意の \( a \in \mathbb{Z} \) に対して)。
  • 実数から 0 を除いた集合 \( \mathbb{R} \setminus \{0\} \):
    乗法を演算としたとき、\( (\mathbb{R} \setminus \{0\}, \cdot) \) は群になる。 単位元は \( 1 \)、逆元は \( \frac{1}{a} \)。
  • 有限巡回群 \( \mathbb{Z}_n \):
    \( n \) を法とした加算で定義される群。例えば、\( \mathbb{Z}_5 = \{0, 1, 2, 3, 4\} \) は加算により群をなす。
  • 置換群 \( S_n \):
    \( n \) 個の要素の順列全体の集合。演算は写像の合成。これは一般には非可換であり、群論の基本例。
  • 行列群:
    例えば、\( n \times n \) の正則行列全体の集合(行列式が 0 でないもの)と行列の積により定義される群(一般線形群 \( GL(n, \mathbb{R}) \))。

アーベル群(可換群)の定義

群 \( (G, \cdot) \) がアーベル群(または可換群)であるとは、さらに以下の性質を満たすことを意味します。

可換性: 任意の \( a, b \in G \) に対して、\( a \cdot b = b \cdot a \)

「演算順序に依存しない」という特徴から、より扱いやすい群として多くの分野で使われます。

アーベル群の具体例

以下はアーベル群の代表的な例です。

  • 整数加法群 \( (\mathbb{Z}, +) \): 前述の通り、加法において可換性が成り立つ。
  • 実数加法群 \( (\mathbb{R}, +) \): 任意の \( a, b \in \mathbb{R} \) に対して \( a + b = b + a \)。
  • 有限巡回群 \( \mathbb{Z}_n \): どの \( n \) に対しても加法に関して可換性があるためアーベル群。
  • 実数乗法群 \( (\mathbb{R} \setminus \{0\}, \cdot) \): 乗法においても可換性が成り立つ。
  • ベクトル空間の加法: 任意の次元のベクトル空間において、ベクトルの加法は可換であり、加法に関するアーベル群を構成する。

一方で、行列の積や置換の合成のように、順序によって結果が異なる演算が定義された群は非可換群となります。アーベル群はその逆で、演算が対称であることから構造が単純になります。

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