なぜ0の階乗は1?高校数学で知っておきたい理由と例題・応用

なぜ0の階乗は1?高校数学で知っておきたい理由と例題・応用

「0の階乗は1と定義される」と学んだとき、「え?なんで?」と思ったことはありませんか?本記事では、その理由を丁寧に説明し、具体的な例題や応用問題まで幅広く紹介します。高校生でもしっかり理解できるように徹底解説します。

目次

階乗とは?基本の定義

まず、階乗(factorial)の定義を確認しましょう。

正の整数 \( n \) に対して、階乗 \( n! \) は次のように定義されます:

\[ n! = n \times (n – 1) \times (n – 2) \times \cdots \times 2 \times 1 \]

たとえば、

  • \( 3! = 3 \times 2 \times 1 = 6 \)
  • \( 5! = 5 \times 4 \times 3 \times 2 \times 1 = 120 \)

階乗は「順列」や「組合せ」といった高校数学の多くの分野で登場します。

なぜ0の階乗は1と定義されるのか

では本題です。なぜ \( 0! = 1 \) なのでしょうか?直感的には、何もかけていないのだから「0」になるような気がするかもしれません。しかし、これは数学的にしっかりとした理由に基づいた定義なのです。

理由①:順列の定義による説明

順列の数を使って考えてみましょう。

「n個のものからr個を選んで並べる方法の数」は、以下の式で表されます:

\[ P(n, r) = \frac{n!}{(n – r)!} \]

特に、\( P(n, n) = \frac{n!}{0!} \) です。ここで、並べ方の数は実際に存在していて、

\[ P(3, 3) = 3! = 6 \]

です。つまり、

\[ \frac{3!}{0!} = 6 \Rightarrow 0! = 1 \]

とならなければ矛盾してしまいます。

理由②:空積(からじょう)という概念

数学では「何もかけない積」を「空積」と呼びます。これは1と定義されています。

なぜなら、積の単位元は1だからです。たとえば:

\[ 2 \times 1 = 2,\quad 2 \times 1 \times 1 = 2 \]

と、いくら1をかけても値は変わりません。したがって、「何もかけない=1をかけたのと同じ」とみなされます。

理由③:数学的帰納法を用いた定義の整合性

階乗の再帰的な定義を見てみましょう:

\[ n! = n \times (n – 1)! \]

この定義において、\( 1! = 1 \times 0! \) なので、もし \( 0! = 1 \) でなければ成り立ちません。

このように、0の階乗を1と定義することで、すべての数学的性質がきれいにつながるのです。

例題で理解を深めよう

例題1:順列における0の階乗の役割

5人から5人を選んで並べる方法は何通りあるか?

\[ P(5, 5) = \frac{5!}{(5 – 5)!} = \frac{120}{0!} = \frac{120}{1} = 120 \]

ここで \( 0! = 1 \) と定義されていることが、式の整合性に重要です。

例題2:組合せでも登場!

「5個の中から0個選ぶ方法の数」は?

\[ {}_{5}C_{0} = \frac{5!}{0! \cdot (5 – 0)!} = \frac{5!}{0! \cdot 5!} = \frac{120}{1 \cdot 120} = 1 \]

ここでも \( 0! = 1 \) が重要な役割を果たしています。

応用:0の階乗が登場する場面

1. 二項定理

二項定理では、組合せ記号が登場し、そこでも \( 0! \) が使われます:

\[ (x + y)^n = \sum_{k=0}^{n} \binom{n}{k} x^{n-k} y^k \]

特に \( k = 0 \) や \( k = n \) のときに、分母に \( 0! \) が出てきます。

2. 微分や指数関数のテイラー展開

\[ e^x = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{x^n}{n!} \]

ここでも \( n = 0 \) のときに \( 0! = 1 \) を使います。

3. コンピュータサイエンスやアルゴリズム

再帰的な定義や初期条件において、0の階乗が1であることは極めて重要です。

まとめ

  • 階乗の定義では \( n! = n \times (n – 1)! \) を使うため、\( 0! = 1 \) は自然な帰結
  • 順列・組合せ・二項定理・指数関数展開など、あらゆる場面で使われる
  • 空積の考え方からも妥当性がある

0の階乗が1であるという定義は、「都合のいい決めごと」ではなく、数学の深い整合性に基づいた自然な選択なのです。

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