【高校生向け】代替効果・所得効果と労働供給の応用を完全解説!
目次
代替効果と所得効果とは?
経済学において、価格が変化したときに消費者の行動がどう変わるかを理解するためには、「代替効果」と「所得効果」という2つの概念が重要です。
代替効果とは?
ある財の価格が下がると、その財は他の財に比べて相対的に安くなります。このため、消費者はその財を他の財の代わりにより多く消費するようになります。これが代替効果です。
所得効果とは?
価格が下がると、同じお金でより多くの財が買えるようになります。つまり、実質的に「お金持ち」になったのと同じ状態です。この効果で消費が増えることを所得効果といいます。
数式による表現
価格変化による消費量の変化は次のように分解されます:
ここで、
- \(\Delta x\):全体の消費変化
- \(\Delta x^{\text{代替}}\):代替効果による変化
- \(\Delta x^{\text{所得}}\):所得効果による変化
図を使った理解
グラフを用いると、代替効果と所得効果は次のように分かれます:
- まず、新しい価格でも旧効用水準を維持する点を求めます(補償された予算線)。このときの消費変化が「代替効果」です。
- 次に、実際の予算線まで動かして、その変化が「所得効果」です。
このように、代替効果と所得効果は、価格変化による消費変化を2段階に分けて分析する方法です。
労働供給と代替・所得効果
次に、これを労働供給の分析に応用してみましょう。
労働と余暇のトレードオフ
人は時間を「労働」か「余暇」に配分します。労働をすると賃金が得られますが、余暇が減ります。逆に、余暇を増やすと所得は減ります。
このとき、労働供給量は以下のように表現されます:
\[ L = T – l \]ここで、
- \(L\):労働時間
- \(T\):1日の合計時間(例:24時間)
- \(l\):余暇時間
賃金が上がったとき
賃金(時給)が上昇すると次の2つの効果があります:
- 代替効果:余暇の「機会費用」が高くなるので、余暇を減らして労働を増やす傾向。
- 所得効果:実質所得が増えるので、生活に十分なお金を得られるようになり、余暇を増やす傾向。
つまり、賃金上昇が労働を増やすか減らすかは、代替効果と所得効果のどちらが大きいかに依存します。
具体例と例題
例題1:価格変化による消費の変化
A君はパンとごはんを消費しています。パンの価格が1個100円から80円に下がりました。A君の所得は1,000円です。
このとき、代替効果と所得効果を考えると、以下のように分析できます:
- パンが安くなった → パンを多く買う(代替効果)
- 実質所得が増えた → パンとごはんの両方を多く買う可能性(所得効果)
例題2:労働供給の変化
Bさんは自由に働く時間を決められ、時給1,000円で働いています。ある日、時給が1,500円になりました。
このとき:
- 代替効果 → 余暇の価値が上がったため、余暇を減らして労働時間を増やす
- 所得効果 → 生活に必要な所得を短時間で得られるようになり、労働時間を減らす
結果として、Bさんの労働時間が増えるか減るかは、どちらの効果が強いかによります。
応用問題と発展的な視点
後方屈折的労働供給曲線
賃金がある水準を超えると、労働時間が逆に減少する現象があります。これを「後方屈折的労働供給曲線」といいます。
数式で示すと、労働供給関数 \(L(w)\) は、次のような非線形の形をとります:
\[ \frac{dL}{dw} > 0 \quad (\text{低賃金のとき}), \quad \frac{dL}{dw} < 0 \quad (\text{高賃金のとき}) \]政策的含意
政府が最低賃金を上げたとき、労働者が労働を増やすか減らすかも、この2つの効果のバランスによって決まります。代替効果が大きければ労働を増やし、所得効果が大きければ労働を減らす可能性があります。
高校生へのアドバイス
代替効果と所得効果は、将来の経済学や日常の意思決定にも関係する重要な概念です。図と数式の両方で理解し、練習問題を通して身につけましょう。