高校生でもわかる!ギッフェン財と代替効果・所得効果の完全解説
本記事では、ミクロ経済学の中でも難解なテーマである「ギッフェン財」と「代替効果・所得効果」について、丁寧にわかりやすく解説します。高校生でも理解できるように、具体例や図解を多く交えて応用問題まで扱います。
目次
1. そもそも「財」とは?
経済学でいう「財」とは、消費者が購入して使用する商品やサービスのことです。たとえば、パン、自動車、映画チケットなどが財に該当します。
この「財」の価格が変化したときに、私たち消費者の行動がどう変化するかを分析するのが「需要理論」です。
2. 所得効果と代替効果とは?
ある財の価格が変わると、消費者の行動も変わります。このときの行動の変化は、2つの要因に分けて考えることができます。
代替効果(Substitution Effect)
価格が下がった財は、相対的に他の財よりも「お得」になるため、その財をより多く消費するようになります。この効果を「代替効果」と呼びます。
所得効果(Income Effect)
価格が下がると、同じお金でより多くの財を買えるようになります。つまり、実質的に「お金持ちになった」ような状態になるので、より多く消費する傾向になります。これが「所得効果」です。
たとえば、パンの価格が1個100円から80円に下がったとき、次のように考えます:
- 代替効果:他の主食(ごはんなど)よりパンが安くなったので、パンの消費が増える。
- 所得効果:安くなったことで「浮いたお金」でパンや他の財もたくさん買えるようになる。
つまり、価格が下がったときには、一般的には両方の効果が「その財をより多く消費する方向」に働きます。
3. ギッフェン財とは?
しかし、中には例外もあります。価格が下がったにもかかわらず、消費量が減る財が存在します。それが「ギッフェン財(Giffen good)」です。
定義
ギッフェン財とは、価格が下がったときに、
\[ 代替効果 < 所得効果(負の方向) \]となる財です。
言い換えると、代替効果によって消費量は増えるはずですが、それを上回るほど大きな「負の所得効果」があるため、結果的に消費量が減ってしまうのです。
ギッフェン財の例
たとえば、19世紀のイギリスでのジャガイモがよく引用されます。貧困層にとっては主食であり、安価で大量に消費されていました。
- ジャガイモの価格が下がる
- → 所得が実質的に増える
- → もっと高級なパンや肉にお金を回すようになる
- → 結果として、ジャガイモの消費量が減る
このように、「主に低所得者が消費する必需財」がギッフェン財になりやすいと言われます。
4. グラフで見るギッフェン財
ギッフェン財の理解を深めるには、無差別曲線と予算線を用いた図が役立ちます。
通常の財(普通財)の場合
財Aの価格が下がると、予算線は右側に回転し、消費点が右上方向に移動します(Aの消費量が増える)。
ギッフェン財の場合
財Aの価格が下がると、予算線は同様に右側へ移動しますが、消費点が左下方向へ移動する可能性があります(Aの消費量が減る)。
これは、所得効果が負であり、かつその影響が代替効果よりも大きいためです。
5. 応用例題:ギッフェン財を含む選択問題
問題
消費者Aは、2つの財(米と肉)を消費している。米の価格が下がったとき、Aは米の消費量を減らし、肉の消費量を増やした。以下の選択肢の中で正しいものを選べ。
- 米は通常の財である。
- 肉はギッフェン財である。
- 米はギッフェン財である。
- 所得効果は正の効果である。
解答と解説
正解:C「米はギッフェン財である。」
価格が下がったにもかかわらず、消費量が減っているという点で、米はギッフェン財に該当します。これは、代替効果よりも負の所得効果の方が大きい場合にのみ成立します。
6. おわりに:理解を深めるために
ギッフェン財のような例外は、経済学の教科書でも「珍しい」と言われることが多いですが、理論的にはしっかり成立しています。
代替効果と所得効果を分けて考える視点は、今後の経済学の学習でも非常に重要です。グラフや具体例を使って、ぜひ自分の中で「イメージできる」ようにしておきましょう。
より深い内容に進むときには、スルツキー分解やヒックス分解といった概念も登場しますが、まずは「価格が変わったときの2つの効果」をしっかり理解することが第一歩です。