高校生のための経済学入門:序数的効用とその応用を徹底解説!
目次
序数的効用とは?
「効用」とは、消費者がある財やサービスから得られる満足度を意味します。序数的効用とは、この満足度の「順序」に注目する考え方です。つまり、「どちらが好きか」はわかるけれど、「どのくらい好きか」はわからない、あるいは考慮しないという立場です。
たとえば、以下のような選好(好み)があるとします:
- チョコレート > クッキー > ガム
このように「順位」だけを重視し、数値に意味は持たせません。つまり、チョコレートに10点、クッキーに5点をつけたとしても、「10点 – 5点 = 5点の差」には経済学的意味はないというのが序数的効用の立場です。
序数的効用と基数的効用の違い
経済学では、効用を表現する方法として大きく2つの立場があります:
- 基数的効用(Cardinal Utility):満足度を具体的な数値で測ることができるという考え方。
- 序数的効用(Ordinal Utility):満足度の「順序」はわかるが、数値そのものに意味はないという考え方。
たとえば、次のような効用関数を考えてみましょう:
\[ U(x, y) = x + y \]これは基数的効用に基づいた関数です。この場合、\( x = 3, y = 2 \) のときの効用は 5 であり、\( x = 2, y = 2 \) のときの効用 4 よりも高いといえます。そしてその差「1」にも意味があるとします。
一方、序数的効用では次のような効用関数も使えます:
\[ U(x, y) = x \cdot y \]こちらは、消費者の選好を「順序」として表すためのツールです。たとえ効用関数が異なっても、選好の順序が同じならば、同じ意味を持つとされます。
序数的効用の具体例
高校生にも身近な例を用いて、序数的効用の理解を深めてみましょう。
例1:飲み物の選好
あなたが以下のような順で飲み物を好んでいるとします:
- 1位:オレンジジュース
- 2位:コーラ
- 3位:水
このとき、オレンジジュース > コーラ > 水 という選好順はわかりますが、「オレンジジュースがコーラの2倍おいしい」といった比較はできません。ここが序数的効用のポイントです。
例2:遊園地での遊びの選択
次のようにあなたが遊園地でのアトラクションを選ぶ順番を考えたとします:
- 1位:ジェットコースター
- 2位:観覧車
- 3位:メリーゴーランド
これも「どれが一番好きか」はわかるけれど、その差が「数値的にどれだけか」は問題ではありません。
序数的効用の応用例
序数的効用は、現代のミクロ経済学における標準的な前提です。特に消費者の最適選択や需要理論に応用されます。
無差別曲線と予算制約
序数的効用は、無差別曲線(indifference curve)の考えと密接に関連しています。消費者は以下のように最適な選択をします:
- 予算制約線:与えられた所得の範囲内で消費できる組み合わせを表す直線
- 無差別曲線:同じ効用(満足度)を与える消費の組み合わせ
以下の条件で最適な消費点を決定します:
\[ \text{無差別曲線の接線の傾き} = \text{予算制約線の傾き} \]数式で書くと、次のようになります:
\[ \frac{MU_x}{MU_y} = \frac{P_x}{P_y} \]ここで、
- \(MU_x\):財\(x\)の限界効用
- \(MU_y\):財\(y\)の限界効用
- \(P_x\), \(P_y\):それぞれの価格
この関係は、序数的効用の立場からでも導けます。限界効用の比が価格比に一致することで、最も好ましい組み合わせが選ばれます。
政策分析への応用
経済政策を考える際にも、序数的効用が役立ちます。たとえば、課税政策や補助金の配分の影響を分析する際、消費者の選好構造がわかっていれば、どのような行動変化が起こるかを予測できます。
選好の公理と順序づけ
経済学では、次のような選好の性質(公理)を仮定することが多いです:
- 完全性(Completeness):すべての選択肢について、どちらが好ましいか判断できる。
- 推移性(Transitivity):\( A > B, B > C \) ならば \( A > C \)。
これらの前提により、消費者の選好を一貫して順位付けすることが可能となり、効用関数によってその順序を表現できるようになります。
まとめ
序数的効用は、消費者の選好を「順位」でとらえるというシンプルかつ強力な考え方です。数値の大小に意味を持たせないことで、より現実に近いモデルを作ることが可能になります。
高校生の皆さんも、普段の「好き・嫌い」を振り返ってみると、序数的効用の概念を実生活の中で感じることができるはずです。経済学を学ぶ第一歩として、この考え方をしっかり身につけておきましょう!