【高校数学】ヘルダーの不等式の応用を徹底解説!例題でマスターしよう
ヘルダーの不等式(Hölderの不等式)は、数学の中でも特に不等式の応用として重要なトピックです。大学入試でも応用力を問われる問題として出題されることがあり、本質的な理解が求められます。ここでは高校生向けに、ヘルダーの不等式の基本から応用例題まで丁寧に解説します。
目次
ヘルダーの不等式とは?
ヘルダーの不等式は、数列や関数に関する重要な不等式で、一般には以下のように表されます。
実数 \( a_1, a_2, \ldots, a_n \)、\( b_1, b_2, \ldots, b_n \) とし、
\( p > 1 \)、\( q > 1 \)、\( \frac{1}{p} + \frac{1}{q} = 1 \) を満たすとき、
\[ \sum_{i=1}^n |a_i b_i| \leq \left( \sum_{i=1}^n |a_i|^p \right)^{1/p} \left( \sum_{i=1}^n |b_i|^q \right)^{1/q} \]
この不等式は、コーシー・シュワルツの不等式の一般形とみなされ、\( p = q = 2 \) の場合にコーシー・シュワルツの不等式となります。
不等式の形と使い方
ヘルダーの不等式の鍵は「絶対値」「累乗」「共役指数(pとq)」です。使い方のコツは、各項の形を確認して、適切に p と q を選ぶことです。
- 例えば \( p = 3 \) なら \( q = \frac{3}{2} \)
- 問題文に累乗和が出てきたら要注意!ヘルダー適用のチャンスです。
ヘルダーの不等式の基本例題
例題1
次の値を評価せよ。
\[ S = a^3 b + a b^3 \quad (a, b > 0) \]
解説:
\( a^3 b + a b^3 \) を見ると、\( a^3 \)と \( b^3 \) が対称的に登場しています。
ここでは \( p = 3 \), \( q = \frac{3}{2} \) を使ってヘルダーの不等式を適用します。
まず次のように項を分けて考えます:
\[ a^3 b + a b^3 = ab(a^2) + ab(b^2) \Rightarrow ab(a^2 + b^2) \]
ここで、\( a^2 + b^2 \leq (a^3 + b^3)^{2/3} \cdot 2^{1/3} \) のように、ヘルダーの不等式を用いることができます。
また、試験では答えを「特定の変数で表す」または「定数倍で評価する」ことがよくあります。
応用例題1:3項以上の応用
例題2
正の数 \( a, b, c \) に対して次を示せ:
\[ a^2 b + b^2 c + c^2 a \leq (a^3 + b^3 + c^3) \]
解説:
まず各項の構造を見ると、掛け合わせの中に三乗が隠れていそうです。
ヘルダーの不等式の形に合わせるには:
- \( a^2 b = a^{2} b^{1} \)
- \( b^2 c = b^{2} c^{1} \)
- \( c^2 a = c^{2} a^{1} \)
このとき、共役指数 \( p = 3 \), \( q = \frac{3}{2} \) を選びます。
\[ a^2 b + b^2 c + c^2 a \leq \left( a^3 + b^3 + c^3 \right)^{2/3} \cdot \left( b^{3/2} + c^{3/2} + a^{3/2} \right)^{2/3} \]
このように、複数項にまたがるときでも整理して指数を調整すれば適用可能です。
応用例題2:パラメータ付き問題
例題3
実数 \( x, y > 0 \) に対し、次の評価をせよ:
\[ \frac{x}{y^{2/3}} + \frac{y}{x^{2/3}} \]
解説:ヘルダーを使って評価するには:
まず共役指数を考えると、ここでは \( p = 3 \), \( q = \frac{3}{2} \) が自然です。
\[ \frac{x}{y^{2/3}} = x \cdot y^{-2/3}, \quad \frac{y}{x^{2/3}} = y \cdot x^{-2/3} \]
この形にしてから、ヘルダーの不等式により次が成り立ちます:
\[ \frac{x}{y^{2/3}} + \frac{y}{x^{2/3}} \leq \left( x^3 + y^3 \right)^{1/3} \cdot \left( \frac{1}{y^2} + \frac{1}{x^2} \right)^{2/3} \]
このように、指数を含む複雑な形でも共役指数に注目すれば対応できます。
ヘルダーの不等式と他の不等式の比較
コーシー・シュワルツの不等式との違い:
- ヘルダーは \( p \) や \( q \) の選択が自由。
- コーシーは \( p = q = 2 \) 固定。
ヤングの不等式は、ヘルダーの証明にも使われる基礎的な不等式です。
高校数学での出題頻度は、コーシー>ヘルダー>ヤングの順です。
まとめと学習アドバイス
- ヘルダーの不等式は「指数のバランス」と「和の構造」がカギ。
- まずは \( p = 3 \), \( q = 3/2 \) を使う練習から始めよう。
- 応用では、式の見かけに惑わされず指数構造を見ることが重要。
ヘルダーの不等式は、数学的思考力を鍛える上でもとても有用なツールです。例題を繰り返し解いて、確実に自分の武器にしていきましょう!