【高校数学】チェビシェフの不等式を完全マスター|基本から応用例まで丁寧解説

【高校数学】チェビシェフの不等式を完全マスター|基本から応用例まで丁寧解説

目次

チェビシェフの不等式とは?

チェビシェフの不等式は、確率論における重要な不等式の一つで、「平均から大きく外れる値が出る確率」を上から押さえるための道具です。 母集団の分布形状(正規分布かどうかなど)に関係なく成り立つため、非常に汎用的で強力な不等式です。

たとえば「試験の平均点から10点以上離れる人がどのくらいいるか?」を予測する場面で使えます。

基礎:不等式の意味と成り立ち

チェビシェフの不等式は以下のように表されます:

$$ P(|X – \mu| \geq k\sigma) \leq \frac{1}{k^2} $$

  • \(X\):確率変数(試験の点数など)
  • \(\mu\):平均
  • \(\sigma\):標準偏差
  • \(k\):正の定数(どれくらい離れているか)

この不等式は「平均から \(k\sigma\) 以上離れる確率は、最大でも \(1/k^2\) である」という意味です。

簡単な例:

例えば、あるテストの平均点が60点、標準偏差が10点だったとします。このとき、80点以上(または40点以下)になる確率は?

この場合、平均から20点離れているので \(k = 2\) です。したがって:

$$ P(|X – 60| \geq 20) \leq \frac{1}{2^2} = \frac{1}{4} = 0.25 $$

つまり、80点以上または40点以下になる人の割合は最大でも25%だとわかります。

例題で理解するチェビシェフの不等式

例題1:平均と標準偏差が与えられた場合

あるクラスのテストで、平均点が70点、標準偏差が5点だった。得点が60点未満または80点より大きい人の割合の上限を求めよ。

平均から10点離れている → \(k = \frac{10}{5} = 2\)

$$ P(|X – 70| \geq 10) \leq \frac{1}{2^2} = \frac{1}{4} = 0.25 $$

このように、全体の25%以下しかその範囲外には存在しません。

例題2:不等式の裏を読む

逆に「平均から2σ以内にどれだけのデータが収まっているか」は次のようにわかります。

$$ P(|X – \mu| < k\sigma) \geq 1 - \frac{1}{k^2} $$

たとえば、\(k = 2\) なら:

$$ P(|X – \mu| < 2\sigma) \geq 1 - \frac{1}{4} = \frac{3}{4} = 0.75 $$

つまり、データの少なくとも75%は平均から2σ以内にあるといえます。

応用例:実生活やデータ分析での活用

応用1:品質管理

製造業では「製品の寸法が基準からどれくらい外れるか」を管理するために使われます。分布が不明でも「外れ値の上限確率」がわかるため、品質保証の基準設定に便利です。

応用2:試験結果の分析

クラスのテスト結果のばらつきを評価する際、偏差値や分布が不明でも、一定範囲から外れる学生の上限を推定できます。

応用3:保険・リスク管理

損害保険などで「予測不能な損失」が起きる確率を過大評価しないために用いられることもあります。特にリスクが正規分布しないときに有効です。

応用4:データが少ない時の推定

分布の形状がよく分からないときやサンプル数が少ないときに、「確率の上限を保証できる」点でチェビシェフの不等式は重宝されます。

まとめと理解を深めるポイント

  • チェビシェフの不等式は、分布の形に依存せずに成り立つ「強力な上限評価ツール」です。
  • 「平均からどれだけ外れた値が出るか」の確率上限を与えてくれます。
  • 統計・確率だけでなく、品質管理や金融など実生活の幅広い分野で応用されます。
  • 数式を覚えるだけでなく、実際の問題に当てはめて活用してみましょう。

この不等式は高校数学の中でも「確率と統計」の応用力を鍛えるうえでとても重要です。実際のデータや日常生活の中に潜む「不確実性」に強くなる一歩として、しっかり理解しておきましょう。

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