期待効用理論とプロスペクト理論の違いを徹底解説!高校生にもわかる意思決定の経済学

期待効用理論とプロスペクト理論の違いを徹底解説!高校生にもわかる意思決定の経済学

目次

1. 期待効用理論とは?

期待効用理論(Expected Utility Theory)は、経済学で人が不確実な状況で意思決定をする際にどのように選択するかを説明する理論です。この理論の前提は、「人は最大の期待効用(満足度)を得るように行動する」ということです。

効用とは「満足度」のことです。選択肢が複数あるとき、それぞれの結果にどれくらいの満足が得られるかを数値化して考えます。

◆ 数式での表現

選択肢 \( A \) の期待効用 \( EU(A) \) は次のように表されます:

$$ EU(A) = \sum_{i=1}^{n} p_i \cdot u(x_i) $$

ここで、

  • \( p_i \):各結果 \( x_i \) の発生確率
  • \( u(x_i) \):結果 \( x_i \) に対する効用(満足度)

この理論は、ノーベル賞を受賞したフォン・ノイマンとモルゲンシュテルンによって体系化されました。

◆ 前提条件

  • 完全な合理性
  • 選好の一貫性(トランジティビティ)
  • 確率が正確に理解されている

2. プロスペクト理論とは?

プロスペクト理論(Prospect Theory)は、期待効用理論が説明できないような人間の「非合理的」な行動を説明するために開発された理論です。1979年にダニエル・カーネマンとエイモス・トヴェルスキーによって提唱されました。

この理論では、人は「利益」よりも「損失」に対して強く反応し、リスクに対する態度が状況によって異なると考えます。

◆ 価値関数と確率加重

プロスペクト理論では、「価値関数」\( v(x) \) と「確率加重関数」\( \pi(p) \) を使います。

$$ V = \sum_{i=1}^{n} \pi(p_i) \cdot v(x_i) $$

  • 価値関数 \( v(x) \):利得と損失に対して異なる形状を持ち、損失側では急勾配(損失回避)
  • 確率加重関数 \( \pi(p) \):人は小さな確率を過大評価し、大きな確率を過小評価する傾向がある

◆ 特徴

  • 損失回避:損失の痛みは利得の喜びよりも大きく感じられる
  • 参照点依存:人は変化(損か得か)に反応し、絶対的な水準には無関心
  • 確率加重:客観的な確率ではなく、主観的に歪んだ確率で判断する

3. 両者の違いを比較しよう

項目 期待効用理論 プロスペクト理論
前提 合理的で一貫した意思決定 心理的バイアスを考慮
価値評価 絶対的な効用 参照点に基づく相対評価
リスクへの態度 一貫したリスク選好 利得ではリスク回避、損失ではリスク追求
確率の扱い 客観的確率を使用 主観的に重みづけされた確率

4. 具体例で理解しよう

◆ 例1:宝くじと現金

あなたは次の2つの選択肢のどちらを選びますか?

  • A:90%の確率で1万円もらえる
  • B:確実に8,000円もらえる

期待効用理論では、各選択肢の期待値を計算して比較します。プロスペクト理論では、確率の歪みや損失回避が影響します。多くの人はB(確実な8000円)を選ぶ傾向にあり、これは「リスク回避」の行動です。

◆ 例2:損失のフレーミング

今度は次の2つの選択肢です。

  • C:確実に8,000円失う
  • D:90%の確率で1万円失うが、10%の確率で何も失わない

この場合、多くの人がDを選びます。損失を避けるために、あえてリスクを取るのです。これは「損失回避」と「リスク追求」の特徴が出ています。

5. なぜ重要なのか?

期待効用理論は合理的な意思決定の理想モデルとして、プロスペクト理論は現実の人間行動を理解するためのモデルとして、それぞれ重要な役割を果たします。

  • 経済政策の設計:人々の選好を反映した政策立案が可能に
  • マーケティング:損失回避を活用した広告戦略
  • 金融商品設計:リスク認識に基づく商品設計

このように、理論の違いを理解することで、経済やビジネスの実践的な場面でも役立ちます。

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