価格設定者とは?独占・寡占市場で活躍する企業の秘密を徹底解説!
目次
価格設定者とは何か?
経済学において「価格設定者(Price Maker)」とは、自社の商品やサービスの価格を自ら決定できる企業のことを指します。これは、企業が市場で十分な影響力を持っており、他の競合が価格を決める上で大きな制約にならない場合に成立します。
たとえば、唯一の水供給業者が存在する町では、その業者が価格設定者となります。なぜなら、住民はその業者からしか水を購入できず、業者が値段を決められるからです。
価格受容者との違い
「価格受容者(Price Taker)」は、市場価格を受け入れるしかない存在で、自ら価格を決めることはできません。完全競争市場における企業や消費者がこれに該当します。
たとえば農業市場を考えてみましょう。たくさんの農家が同じ種類のトマトを販売している場合、1人の農家が価格を上げても消費者は他の農家から購入してしまうため、価格を自ら決めることはできません。
このように、価格設定者と価格受容者の違いは、企業が市場にどれだけ影響力を持つかにかかっています。
価格設定者が登場する市場
価格設定者は主に次のような市場で登場します。
- 独占市場:ある商品・サービスを提供している企業が1社しか存在しない市場。例:地域独占の電力会社。
- 寡占市場:少数の企業が市場を支配している市場。例:通信業界や自動車業界。
- 独占的競争市場:多くの企業が存在するが、製品に差別化がある市場。例:カフェ、ファッションなど。
価格設定のメカニズム(数式付き)
価格設定者は、利益を最大化するように価格を決めます。そのためには以下の条件を満たす必要があります。
利潤最大化条件:
企業の利潤(\(\pi\))は以下のように表されます:
\[ \pi(q) = P(q) \cdot q – C(q) \]
- \(q\):生産量
- \(P(q)\):生産量に応じた価格(需要曲線に依存)
- \(C(q)\):生産にかかる総費用
これを微分して最適な生産量 \(q^*\) を求めると、次の条件が導かれます:
\[ \frac{d\pi}{dq} = \frac{d(P(q) \cdot q)}{dq} – \frac{dC(q)}{dq} = 0 \]
\[ P(q) + \frac{dP(q)}{dq} \cdot q = MC(q) \]
左辺は限界収入(MR)、右辺は限界費用(MC)です。この式は次のようにも表されます:
\[ MR = MC \]
さらに、価格弾力性 \(\varepsilon\) を使って表すと次の式が得られます:
\[ \frac{P – MC}{P} = -\frac{1}{\varepsilon} \]
この式から、価格弾力性が小さい(=需要が価格にあまり敏感でない)ほど、企業は高いマークアップを設定できることがわかります。
具体的な例と応用
独占企業の例:鉄道会社
地方の鉄道会社が唯一の交通手段を提供している場合、利用者はそのサービスを使うしかありません。会社は利用者の需要を見ながら、適切な価格を決定します。たとえば通勤需要が高い時間帯に価格を高めに設定することがあります。
寡占の例:携帯キャリア
日本では大手3社(ドコモ、au、ソフトバンク)による寡占市場が成立しています。各社は他社の価格戦略を意識しながら、自社の料金プランを決めます。このとき、完全に自由に価格を決めるわけではなく、戦略的な判断が求められます。
独占的競争の例:カフェチェーン
スターバックスやタリーズなどのカフェは、他にも多くの競合がいる中で、サービスや雰囲気、味などの差別化を武器に価格を決めます。完全な価格設定者ではないものの、価格にある程度の自由度があります。
まとめ
- 価格設定者とは、自社の製品やサービスの価格を自ら決定できる企業。
- 価格受容者とは対照的に、市場での影響力を持つ企業に限られる。
- 独占・寡占・独占的競争市場などにおいて登場する。
- 利潤最大化のために「限界収入=限界費用」の条件を満たす価格を設定。
- 需要の価格弾力性が小さいほど、より高いマークアップが可能。
- 身近な事例として、鉄道会社、携帯キャリア、カフェチェーンなどがある。