数学の基礎:有界とは何か?有界関数をわかりやすく解説
目次
有界とは何か?
「有界」とは、ある集合や関数が特定の範囲の中に収まっていることを意味します。特に数学においては、集合や関数の値が無限に大きくなったり、小さくなったりしないことを指します。
具体的には、実数集合 \( \mathbb{R} \) の部分集合 \( A \) がある定数 \( M > 0 \) に対して、すべての要素 \( x \in A \) に対して \[ |x| \leq M \] を満たすとき、集合 \( A \) は有界であるといいます。
上に有界・下に有界とは
有界には2つの方向があります。「上に有界」と「下に有界」です。
上に有界
集合 \( A \subset \mathbb{R} \) に対して、ある実数 \( M \) が存在して、すべての \( x \in A \) に対して \[ x \leq M \] を満たすとき、集合 \( A \) は上に有界上界
下に有界
同様に、ある実数 \( m \) が存在して、すべての \( x \in A \) に対して \[ x \geq m \] を満たすとき、集合 \( A \) は下に有界下界
有界関数の定義
関数 \( f: D \to \mathbb{R} \) が定義域 \( D \) において有界であるとは、ある定数 \( M > 0 \) が存在して、すべての \( x \in D \) に対して \[ |f(x)| \leq M \] が成り立つことをいいます。つまり、関数の値が定義域内で有限の範囲に収まっている状態です。
このとき、関数 \( f \) は有界関数(bounded function)
有界関数の具体例
例1:正弦関数 \( \sin x \)
関数 \( f(x) = \sin x \) はすべての実数 \( x \in \mathbb{R} \) に対して定義されており、その値は常に \[ -1 \leq \sin x \leq 1 \] を満たします。したがって、\( |\sin x| \leq 1 \) より、この関数は有界関数です。
例2:定数関数 \( f(x) = c \)
任意の定数 \( c \in \mathbb{R} \) に対して、\( f(x) = c \) は定義域に関係なく有界です。なぜならすべての \( x \) に対して \[ |f(x)| = |c| \] が成り立つからです。
例3:絶対値関数 \( f(x) = \frac{1}{1+x^2} \)
この関数は \( x \in \mathbb{R} \) 上で定義され、最大値は \( x = 0 \) で 1、最小値は無限遠点で 0 に近づきますが超えません。したがって \[ 0 < f(x) \leq 1 \] より有界関数です。
有界でない関数の例
例1:線形関数 \( f(x) = x \)
この関数は \( x \to \infty \) または \( x \to -\infty \) のとき、値も無限に発散するため、有界ではありません。
例2:二次関数 \( f(x) = x^2 \)
定義域が実数全体の場合、\( x^2 \to \infty \) となるため、有界ではありません。ただし、定義域を有限区間 \( [-1, 1] \) に限定すれば \[ 0 \leq x^2 \leq 1 \] となり、有界関数になります。
有界性の応用と重要性
有界性は、数学解析や関数の収束性の議論、積分の収束判定など多くの分野で重要です。例えば、次のような応用があります:
- 関数列の一様収束の判定
- コンパクト性の判定(Heine-Borelの定理)
- 定積分の収束性の判断
- 微積分学における極限の評価
また、数値解析や統計学においても、関数が有界であることはアルゴリズムの安定性や誤差評価の前提条件となることがあります。
まとめ
「有界」であるという性質は、数学における基本かつ非常に重要な概念です。関数や集合が特定の範囲内に収まるかどうかを知ることで、極限、連続性、積分、解析的性質など、多くの問題にアプローチできます。
有界性を見抜く力は、数学的な直感を育てる上で極めて重要です。今後、より複雑な関数や集合を扱う際にも、まずその「有界性」をチェックする癖をつけるとよいでしょう。