【数学・統計に役立つ近似手法】スターリングの公式を解説
スターリングの公式は、階乗(n!)を近似するための非常に強力なツールです。特に、確率論や統計学、数値計算、情報理論など様々な分野で頻出します。本記事では、この公式の導出・意味・使い方・応用例まで徹底的に解説します。
目次
スターリングの公式とは?
スターリングの公式とは、大きな数の階乗を近似するための公式です。通常、n! は大きな n に対して爆発的に増加するため、計算や理論的扱いが難しくなります。そこで、このような増加を滑らかに近似できる関数を用意することで、扱いやすくします。
なぜ必要なのか?直感的な理解
たとえば、確率分布における組み合わせ(nCr)の計算には階乗が現れますが、n が大きい場合、厳密な階乗の計算は難しくなります。スターリングの公式を使えば、計算が簡略化され、理論の理解も深まります。
スターリングの公式の数式とバリエーション
最もよく使われるスターリングの公式は次の形です:
$$ n! \approx \sqrt{2\pi n} \left(\frac{n}{e}\right)^n $$
これはあくまで「近似」であり、n が大きくなるほど精度が増します。また、対数をとることで次のようにも表せます:
$$ \log(n!) \approx n\log n – n + \frac{1}{2} \log(2\pi n) $$
より高精度のバージョンとして、次のように補正項を追加する形もあります:
$$ n! \sim \sqrt{2\pi n} \left(\frac{n}{e}\right)^n \left(1 + \frac{1}{12n} + \frac{1}{288n^2} – \cdots \right) $$
スターリングの公式の導出
導出には様々なアプローチがありますが、以下では定積分と自然対数を使った方法を紹介します。
階乗の定義はガンマ関数によって拡張され、次のように書けます:
$$ n! = \int_0^\infty x^n e^{-x} \, dx $$
この式をもとにラプラスの方法(saddle point法)を使って漸近展開すると、スターリングの公式が導出されます。さらに、log(n!) をリーマン和として近似することでも導出可能です。
具体的な使用例
次のような計算でスターリングの公式が役立ちます:
- 例1: \( 10! \approx \sqrt{2\pi \cdot 10} \left(\frac{10}{e}\right)^{10} \approx 3598695.6 \)(実際の値は3628800)
- 例2: \( \log(100!) \approx 100 \log 100 – 100 + \frac{1}{2} \log(2\pi \cdot 100) \approx 363.74 \)
実際の応用例
スターリングの公式は以下のような場面で応用されます:
- 大数の法則や中心極限定理の証明における確率分布の扱い
- 情報理論におけるエントロピー計算
- 計算機科学でのアルゴリズム解析(特に漸近評価)
- 統計学におけるポアソン分布や二項分布の漸近評価
- 組み合わせの近似(例:\( \binom{n}{k} \))
近似の精度について
スターリングの公式は n が小さい場合には誤差が目立ちますが、n > 10 を超えるあたりから非常に高精度になります。補正項を追加することで、より精密な評価も可能です。
まとめ
スターリングの公式は、数学的に奥が深く、かつ非常に実用的な公式です。階乗の計算を簡略化し、理論の見通しをよくするためのツールとして、確率論・統計学・情報理論などさまざまな分野で活用されています。
特に受験数学や大学初級レベルの統計学・解析学の中でその真価を発揮するため、しっかりと理解しておくと応用範囲が広がります。