複素数が行列に!?知らなきゃ損する数学の裏技

複素数が行列に!?知らなきゃ損する数学の裏技

目次

複素数とは?

複素数は、実数と虚数の組み合わせでできた数です。一般に複素数 \( z \) は次のように表されます: \[ z = a + bi \] ここで、\( a, b \) は実数で、\( i \) は虚数単位(\( i^2 = -1 \))です。複素数は2次元空間、つまり複素平面(Argand平面)上の点として視覚化できます。

例えば、\( 3 + 4i \) という複素数は、横軸に3、縦軸に4の点として表されます。

行列とは?

行列は数の配列で、特に線形変換(回転、拡大、縮小など)を表現するのに使われます。2次元空間での線形変換は、次のような2×2の行列で表されます: \[ A = \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix} \] この行列をベクトル \( \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} \) に掛けると、別のベクトルが得られます。

複素数と行列の対応関係

複素数 \( a + bi \) に対応する2×2行列は、次のように定義されます: \[ a + bi \quad \leftrightarrow \quad \begin{pmatrix} a & -b \\ b & a \end{pmatrix} \] この対応は単なる一時的な定義ではなく、複素数の四則演算の構造と完全に一致します。つまり、加算・乗算などの演算をこの行列に置き換えても同じ結果が得られます。

対応関係の証明と例

加算の対応

例えば、複素数 \( z_1 = a + bi \)、\( z_2 = c + di \) の和は \[ z_1 + z_2 = (a + c) + (b + d)i \] これに対応する行列は: \[ \begin{pmatrix} a & -b \\ b & a \end{pmatrix} + \begin{pmatrix} c & -d \\ d & c \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} a + c & -(b + d) \\ b + d & a + c \end{pmatrix} \] よって、加算は行列でも一致します。

乗算の対応

複素数の積: \[ (a + bi)(c + di) = (ac – bd) + (ad + bc)i \] 行列の積: \[ \begin{pmatrix} a & -b \\ b & a \end{pmatrix} \begin{pmatrix} c & -d \\ d & c \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} ac – bd & -(ad + bc) \\ ad + bc & ac – bd \end{pmatrix} \] よって、複素数の乗算と行列の積も対応しています。

\( z = 2 + 3i \) に対応する行列は: \[ \begin{pmatrix} 2 & -3 \\ 3 & 2 \end{pmatrix} \] \( w = 1 – i \) に対応する行列は: \[ \begin{pmatrix} 1 & 1 \\ -1 & 1 \end{pmatrix} \] これらを掛けると: \[ \begin{pmatrix} 2 & -3 \\ 3 & 2 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 1 & 1 \\ -1 & 1 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 2 + 3 & 2 – 3 \\ 3 – 2 & 3 + 2 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 5 & -1 \\ 1 & 5 \end{pmatrix} \] これは複素数 \( (2 + 3i)(1 – i) = 5 + i \) に対応する行列と一致します。

この対応が意味すること

この対応関係により、複素数による回転や拡大を、行列によって表すことができます。つまり、複素数の世界と線形代数の世界がつながります。 また、複素数の演算がベクトルの線形変換として解釈できるため、視覚的な理解がしやすくなります。

応用例:複素数の掛け算と回転行列

単位複素数 \( e^{i\theta} = \cos \theta + i \sin \theta \) は、複素平面上で原点を中心に角度 \( \theta \) だけ回転する変換を表します。 対応する行列は: \[ \begin{pmatrix} \cos \theta & -\sin \theta \\ \sin \theta & \cos \theta \end{pmatrix} \] これはまさに2次元の回転行列です。したがって、複素数の掛け算は、点を回転させる操作と考えることができます。

例えば、\( e^{i\frac{\pi}{2}} = i \) に対応する行列は \[ \begin{pmatrix} 0 & -1 \\ 1 & 0 \end{pmatrix} \] これは \(90^\circ\) の回転行列です。ベクトル \( (1, 0) \) に掛けると \( (0, 1) \) になり、反時計回りに90度回転したことがわかります。

まとめ

複素数と2×2行列の間には驚くほど強力な対応関係があります。複素数 \( a + bi \) を \[ \begin{pmatrix} a & -b \\ b & a \end{pmatrix} \] に対応させることで、複素数の加算・乗算を行列の演算として扱えるようになります。

この対応は、数学の抽象的な概念を視覚的に理解するための有力な道具になります。特に、複素数の掛け算が回転と拡大に対応するという事実は、数学だけでなく物理や工学の分野でも広く応用されています。

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