ゼロからわかる!固有値の意味と求め方を徹底解説
目次
固有値とは?定義と直感的な意味
固有値(eigenvalue)とは、線形変換においてベクトルの方向を変えずに、その大きさだけを変えるスカラーのことです。 つまり、ある正方行列 \( A \) とゼロベクトルでないベクトル \( \mathbf{v} \) に対して、次のような関係を満たす数 \( \lambda \) を固有値と呼びます:
\[ A\mathbf{v} = \lambda \mathbf{v} \]
ここで、
- \( A \):\( n \times n \) の正方行列
- \( \mathbf{v} \):固有ベクトル(ゼロベクトルではない)
- \( \lambda \):固有値
固有値を求める方程式
式 \( A\mathbf{v} = \lambda \mathbf{v} \) を変形すると次のようになります:
\[ (A – \lambda I)\mathbf{v} = \mathbf{0} \]
ここで \( I \) は単位行列です。この式がゼロベクトル以外の \( \mathbf{v} \) に対して成り立つためには、
\[ \det(A – \lambda I) = 0 \]
という条件が必要です。この式を「固有方程式」と呼び、これを解くことで固有値 \( \lambda \) を求めることができます。
具体例:2×2行列の固有値
次の行列の固有値を求めてみましょう:
\[ A = \begin{pmatrix} 4 & 2 \\ 1 & 3 \end{pmatrix} \]
固有方程式は以下のようになります:
\[ \det(A – \lambda I) = \det \begin{pmatrix} 4 – \lambda & 2 \\ 1 & 3 – \lambda \end{pmatrix} = (4 – \lambda)(3 – \lambda) – 2 \cdot 1 = \lambda^2 – 7\lambda + 10 = 0 \]
この二次方程式を解くと:
\[ \lambda = 5, \quad \lambda = 2 \]
したがって、この行列の固有値は 5 と 2 です。
具体例:3×3行列の固有値
次の行列を考えます:
\[ A = \begin{pmatrix} 2 & 0 & 0 \\ 0 & 3 & 4 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} \]
このような上三角行列の場合、対角成分がそのまま固有値になります。したがって、固有値は:
\[ \lambda = 2, \quad \lambda = 3, \quad \lambda = 1 \]
このように、特殊な形の行列では固有値の計算が簡単になります。
固有値の性質
固有値にはいくつか重要な性質があります:
- 行列 \( A \) の固有値の積は、行列式 \( \det(A) \) に等しい。
- 固有値の和は、行列 \( A \) のトレース(対角成分の和)に等しい。
- 正方行列が実対称行列である場合、固有値はすべて実数になる。
- 固有値がすべて正なら、行列は正定値行列である。
固有値の応用例
固有値は理論的にも応用的にも非常に重要な概念です。代表的な応用例は以下の通りです:
- 主成分分析(PCA):データの次元削減手法で、共分散行列の固有値と固有ベクトルを用いる。
- 構造力学:振動解析において、自然振動数を求めるために固有値問題を解く。
- 量子力学:ハミルトニアン行列の固有値がエネルギー準位を表す。
- 微分方程式:連立線形微分方程式の解に固有値が現れる。
- マルコフ連鎖:遷移行列の固有値は、定常状態の分析に役立つ。