巡回群とは?定義・例・性質まで完全解説

巡回群とは?定義・例・性質まで完全解説

目次

巡回群の定義

巡回群(cyclic group)とは、ある1つの元 \( g \) からそのべき乗(または加法ならば繰り返し加算)によってすべての元が生成される群のことを指します。

より正確に言えば、群 \( G \) が巡回群であるとは、ある元 \( g \in G \) が存在して、 \[ G = \langle g \rangle = \{ g^n \mid n \in \mathbb{Z} \} \] が成り立つことを意味します(加法的記法なら \( G = \{ ng \mid n \in \mathbb{Z} \} \))。

このとき、元 \( g \) を 生成元(generator)と呼びます。

巡回群の具体例

例1:整数全体の加法群 \( (\mathbb{Z}, +) \)

\( \mathbb{Z} \) は \( 1 \) を生成元とする巡回群です。なぜなら、 \[ \langle 1 \rangle = \{ n \cdot 1 \mid n \in \mathbb{Z} \} = \mathbb{Z} \] となるからです。同様に \( -1 \) も生成元になります。

例2:有限巡回群 \( \mathbb{Z}_n \)

\( \mathbb{Z}_n = \{0, 1, 2, \ldots, n-1\} \) は、加法を法 \( n \) で考える巡回群です。
この群は巡回群であり、1を生成元とすることができます。すなわち、 \[ \langle 1 \rangle = \{1, 2, \ldots, n-1, 0\} \] となり、すべての元が生成されます。

ただし、1が生成元であるためには \( \gcd(1, n) = 1 \) である必要があります。実際、任意の \( a \in \mathbb{Z}_n \) が生成元となるかどうかは、\( \gcd(a, n) = 1 \) で決まります。

例3:複素数乗根の群

\( n \) 次単位根の集合 \[ \{ e^{2\pi i k/n} \mid k = 0, 1, \ldots, n-1 \} \] は、乗法に関して巡回群をなします。生成元は \( e^{2\pi i / n} \) などの原始 \( n \) 次根です。

例4:単位円上の回転

単位円上の「等間隔の回転」を考えると、それは巡回群になります。例えば、時計の12時間制における回転(毎時30度回転)は、12次の巡回群です。

巡回群の性質

  • すべての巡回群はアーベル群(可換群)である。
  • 有限巡回群は、生成元の順序によって元の順序が決まる。
  • 有限巡回群の部分群もまた巡回群である。
  • 有限巡回群 \( \mathbb{Z}_n \) の生成元の個数はオイラーのトーシェント関数 \( \varphi(n) \) に等しい。
  • 任意の有限アーベル群は巡回群の直積に分解できる(構造定理)。

特に、巡回群の構造は非常に単純で理解しやすいため、群論の学習の出発点として非常に重要です。

まとめ

巡回群は、たった1つの元からすべての元が生成されるという非常にシンプルかつ基本的な構造を持つ群です。
その理解は、抽象代数学や数論を学ぶうえでの大きな助けになります。

最初に学ぶ群としては最適であり、様々な応用や理論の基礎を支える重要な概念です。

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