回転群の完全ガイド:定義・性質・例と応用まで徹底解説
回転群(特殊直交群)は、数学や物理学、コンピュータグラフィックスなど多くの分野で重要な役割を果たします。本記事では、回転群の定義から性質、具体例、応用例まで詳しく解説します。
目次
回転群の定義
回転群は、線形代数における直交行列の中で、行列式が1のものから構成される群です。
直交群 O(n)
n次元の直交群 O(n) は、次のように定義されます:
\[ \mathrm{O}(n) = \{ A \in \mathrm{GL}_n(\mathbb{R}) \mid A A^\top = I_n \} \]
ここで、\( \mathrm{GL}_n(\mathbb{R}) \) は n 次の可逆行列全体の集合、\( A^\top \) は A の転置行列、\( I_n \) は n 次の単位行列です。
回転群 SO(n)
直交群 O(n) の中で、行列式が1のものからなる部分群を回転群 SO(n) と呼びます:
\[ \mathrm{SO}(n) = \{ A \in \mathrm{O}(n) \mid \det A = 1 \} \]
この群は、n次元空間での回転操作を表現します。
回転群の性質
1. SO(n) は O(n) の正規部分群
SO(n) は O(n) の正規部分群であり、商群 O(n)/SO(n) は次のようになります:
\[ \mathrm{O}(n)/\mathrm{SO}(n) \cong \{\pm 1\} \]
これは、O(n) の各要素の行列式が ±1 であることに対応しています。
2. SO(2) の構造
2次元の回転群 SO(2) は、角度 θ による回転行列から構成されます:
\[ R_\theta = \begin{pmatrix} \cos\theta & -\sin\theta \\ \sin\theta & \cos\theta \end{pmatrix} \]
このような行列は、原点を中心とした平面上の回転を表します。
具体的な例
SO(2) の例
角度 \( \theta = \frac{\pi}{4} \) の回転行列:
\[ R_{\pi/4} = \begin{pmatrix} \cos\left(\frac{\pi}{4}\right) & -\sin\left(\frac{\pi}{4}\right) \\ \sin\left(\frac{\pi}{4}\right) & \cos\left(\frac{\pi}{4}\right) \end{pmatrix} = \frac{1}{\sqrt{2}} \begin{pmatrix} 1 & -1 \\ 1 & 1 \end{pmatrix} \]
SO(3) の例
z軸周りの角度 θ の回転行列:
\[ R_z(\theta) = \begin{pmatrix} \cos\theta & -\sin\theta & 0 \\ \sin\theta & \cos\theta & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} \]
この行列は、3次元空間での z軸周りの回転を表します。
応用例
物理学
回転群は、物理学において対称性の解析に重要です。特に、量子力学では粒子のスピンや角運動量の記述に使用されます。
コンピュータグラフィックス
3D モデルの回転や視点の変更など、コンピュータグラフィックスにおける多くの操作は、回転行列を用いて実現されます。
ロボティクス
ロボットの関節の動きや姿勢制御には、回転群の理論が活用されます。特に、SO(3) はロボットアームの3次元空間での動作解析に不可欠です。