• std::anyとは？
• 基本的な使い方
• 型安全とany_cast
• 値の変更とリセット
• 型情報の取得
• 応用的な使用例
• パフォーマンスと注意点

std::anyとは？

std::any は C++17 で導入された型安全な任意型のコンテナで、どんな型の値でも格納できるクラスです。

これまでC++で動的な型を扱うには、void* や boost::any を使用する方法が一般的でしたが、型安全性や使いやすさの面で問題がありました。C++17 では std::any を使用することで、安全かつ直感的に任意の型の値を格納できます。

基本的な使い方

以下のコードは std::any の基本的な使い方を示しています。

#include <iostream>
#include <any>

int main() {
    std::any a = 42; // int 型の値を格納
    std::cout << std::any_cast(a) << std::endl; // 42 を出力
    
    a = std::string("Hello, std::any!"); // std::string 型の値に変更
    std::cout << std::any_cast(a) << std::endl; // Hello, std::any! を出力
}

型安全とany_cast

std::any_cast<T>(a) を使用して、格納された値を取得できます。ただし、型が一致しない場合は例外 std::bad_any_cast が発生します。

#include <iostream>
#include <any>

int main() {
    std::any a = 3.14;

    try {
        std::cout << std::any_cast(a) << std::endl; // 型が異なるので例外発生
    } catch (const std::bad_any_cast& e) {
        std::cout << "例外発生: " << e.what() << std::endl;
    }
}

型を正しく扱うためには、事前に std::any_cast を試す方法もあります。

#include <iostream>
#include <any>

int main() {
    std::any a = 100;
    
    if (a.type() == typeid(int)) {
        std::cout << "int型: " << std::any_cast(a) << std::endl;
    }
}

値の変更とリセット

std::any の値を変更する場合は、新しい値を代入するだけです。また、reset() を使うと値をクリアできます。

#include <iostream>
#include <any>

int main() {
    std::any a = 42;
    a = 3.14; // double型に変更
    std::cout << std::any_cast(a) << std::endl;
    
    a.reset(); // 値をリセット
    if (!a.has_value()) {
        std::cout << "値は空です" << std::endl;
    }
}

型情報の取得

type() メンバ関数を使うと、格納されている型の情報を取得できます。

#include <iostream>
#include <any>
#include <typeinfo>

int main() {
    std::any a = 42;
    std::cout << "型: " << a.type().name() << std::endl;
}

応用的な使用例

以下の例では、std::any を std::vector に格納して異なる型のデータを扱います。

#include <iostream>
#include <any>
#include <vector>

int main() {
    std::vector data = { 42, 3.14, std::string("C++17") };
    
    for (const auto& item : data) {
        if (item.type() == typeid(int)) {
            std::cout << "int: " << std::any_cast(item) << std::endl;
        } else if (item.type() == typeid(double)) {
            std::cout << "double: " << std::any_cast(item) << std::endl;
        } else if (item.type() == typeid(std::string)) {
            std::cout << "string: " << std::any_cast(item) << std::endl;
        }
    }
}

パフォーマンスと注意点

std::any は汎用性が高いですが、使用時には以下の点に注意が必要です。

• 型情報のオーバーヘッド: std::any は型情報を内部に保持するため、メモリ使用量が増加する可能性があります。
• 動的メモリ確保: 大きなデータ型を格納する場合、内部でヒープ確保が行われる可能性があります。
• アクセスコスト: std::any_cast を使う際、型のチェックが発生するため、直接型を指定した変数を使うよりも遅くなります。

そのため、頻繁なアクセスが必要な場合は std::variant や通常の型を使用することも検討すると良いでしょう。