• assert.hとは？
• 基本的な使い方
• 実際の使用例
• アサーションを無効化する方法
• assert.hの適用場面
• assert.hの制限と注意点

assert.hとは？

assert.h はC言語の標準ライブラリであり、主にデバッグ目的で使用されるアサーション（Assertion）を提供します。 アサーションとは、「ある条件が真であることを確認し、偽ならばプログラムを異常終了させる」仕組みです。

これを利用することで、プログラムのバグを早期に発見し、不正な状態が発生した際に即座に停止することができます。

基本的な使い方

assert.h を使うには、以下のように #include <assert.h> を記述し、 assert(条件式) を呼び出します。

#include <stdio.h>
#include <assert.h>

int main() {
    int x = 5;
    assert(x > 0);  // 条件が真なので何も起こらない

    x = -1;
    assert(x > 0);  // 条件が偽なのでプログラムが異常終了

    return 0;
}

上記の例では、最初の assert(x > 0) は問題なく通過しますが、 x = -1 に変更された後の assert(x > 0) は失敗し、プログラムが終了します。

実際の使用例

assert は、主に以下のような場面で利用されます。

関数の前提条件の検証

関数の引数が適切な範囲にあるかをチェックするために使われます。

#include <stdio.h>
#include <assert.h>

void set_value(int index) {
    assert(index >= 0 && index < 10);  // indexの範囲をチェック
    printf("Index %d is valid.\n", index);
}

int main() {
    set_value(5);  // 正常
    set_value(-1); // アサーション失敗
    return 0;
}

ポインタのNULLチェック

ポインタがNULLでないことを確認するのにも使えます。

#include <stdio.h>
#include <assert.h>

void print_message(char *msg) {
    assert(msg != NULL);  // NULLチェック
    printf("%s\n", msg);
}

int main() {
    char *message = "Hello, World!";
    print_message(message); // 正常

    print_message(NULL); // アサーション失敗
    return 0;
}

配列アクセスの境界チェック

配列のインデックスが適切な範囲にあるかをチェックできます。

#include <stdio.h>
#include <assert.h>

int get_element(int arr[], int size, int index) {
    assert(index >= 0 && index < size);  // インデックスの範囲を確認
    return arr[index];
}

int main() {
    int numbers[] = {10, 20, 30, 40, 50};
    printf("%d\n", get_element(numbers, 5, 2)); // 30（正常）

    printf("%d\n", get_element(numbers, 5, 10)); // アサーション失敗
    return 0;
}

アサーションを無効化する方法

assert は NDEBUG を定義することで無効化できます。 これは、本番環境では不要なチェックを削減するために使われます。

#define NDEBUG  // アサーションを無効化
#include <assert.h>
#include <stdio.h>

int main() {
    int x = -1;
    assert(x > 0);  // 無効化されているため、失敗してもプログラムは続行
    printf("Program continues...\n");
    return 0;
}

assert.hの適用場面

assert は、以下のようなケースで特に有効です。

• 開発中のデバッグ時に不正な状態を検出したい場合
• 関数の引数が期待通りの範囲にあるかを確認する場合
• プログラムの一貫性を保証するために、特定の条件を満たすことを強制する場合

assert.hの制限と注意点

ただし、assert には以下の制限や注意点があります。

• アサーションに引っかかった場合、プログラムが即座に終了するため、リカバリー処理ができない
• 本番環境では NDEBUG を定義して無効化する必要がある
• 副作用のあるコードを assert() の中に書くと、無効化時に動作が変わる可能性がある

例えば、以下のようなコードは危険です。

#define NDEBUG
#include <assert.h>
#include <stdio.h>

int main() {
    int x = 0;
    assert(x = 10);  // NDEBUG を定義すると、この行が無視される！
    printf("x = %d\n", x);  // 期待と異なる結果が出る
    return 0;
}

アサーションの中では副作用のあるコード（代入など）を避け、純粋な条件式のみを書くようにしましょう。