書いてない情報を勝手に使わないで

書いてない情報を勝手に使わないで

 書かれていない情報を使わないことは、教科書を読むときにとても重要なことです。勉強を指導しているとしばしば感じるのですが、児童・生徒・学生のみなさんは教科書を説明してと言われたときに、該当ページのみを読んで説明しようとすることがしばしばあります。これはある意味で正しいのですが、ある意味で不十分だと考えています。

 ある意味で不十分とはどういうことなのでしょうか。それを理解するためには、教科書がどのように書かれているのかについて理解しておく必要があります。教科書は前から順番に読んでいくように設計されています。これは教科書が本である以上当たり前なのですが、教科書を利用するうえで理解しておくべき最も重要な事実と言っても過言ではありません。

 文章を書くときに書き手が意識することがあります。それは、必要な材料を準備したうえで新しい事項の説明をすることです。これも当たり前なことなのですが、唐突に新しい概念を導入することは稀です。そのため、前から順番にきちんと理解して教科書を読んでいけば、教科書に書かれている事項を理解できるようになっています。たとえば、掛け算は足し算を勉強した後に勉強しますが、これは掛け算を理解するためには足し算を理解することが必要だからです。

 逆に、特別な言及なしに、前のページに記載されていない考え方を使用することはほとんどありません。少なくとも、その教科書を学ぶ前に分かっておくべき教科書で学んだことになっているはずです。ですので、あるページに書かれている概念は前のページで説明された概念を使って説明されています。そのため、あるページを説明してくださいと言われたときに、そのページのみを読んで説明するということは、前のページで説明された概念を理解している場合にのみ有効になります。Aという概念を説明するときにBやCという概念が使われていれば、BやCはAよりも前のページで説明されているはずですので、BやCを理解したうえでAを説明するようにしましょう。BやCがどこで説明されているのかは、索引に記載されています。

 この原則に反した教科書の読み方をする学生や生徒や児童が大勢います。彼らの読み方は、どこにも書いていないことをどこからか勝手に持ってきて、説明した気になるという読み方です。この読み方をすると教科書は全く役に立ちません。個別の概念について適当な説明をしたリストが出来上がるだけになってしまいます。このような読み方をしていると、概念の理解が不正確になるばかりか、個別事項のリストを覚えることになるので膨大な事項を記憶する必要が出てきてしまいます。その結果、成績としては伸び悩むことになります。

 このような問題を避けるためには、問題演習以前に、教科書を通して読んだり、理解できていない語句が出てきたら索引を引いて意味を確認しながら教科書を読むという地味な勉強も、行うようにするとよいでしょう。

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